四 季 の 小 路
  
田森つとむ(札幌市)
  「そだね-」と嫁のあひづち山笑ふ
  じょっぴんをかはぬ一村麦の秋
  樺太へ歩いて行こか流氷野
  三月十一日の海平ら
  「だるまさんがころんだ」ふりむけば秋
  
田湯岬(札幌市/道)
  えぞにうのただ点々と古戦場
  足跡は海へ真つすぐ晩夏光
  キャンプ地は元暴れ川魚跳ねる
  立葵のみが佇む殉難碑
  島すでに眠りの中へ大夕焼
    
丹下美井(旭川市/氷原帯)
  一枚の水になるまで代田掻く
  ほうたるは子の手のひらの宇宙船
  稲の花二杯目の生ビール
  幸せな一日だつた夕紅葉
  峠越す馬と息継ぐ雪世界
    
大郷石秋(北広島市/秋麗・踏青)
  起笹や余生の力湧くごとし
  切株は余生の居場所庭に春
  はまなすや草田男の声海の声
  ひと握りほどの哀しみ夜の雪渓
  啄木鳥の穴の暗さはわが暗さ
  
都賀由美子(鹿部町/艀通信)
  スプーンを埋める遊び山眠る
  冬の靄米穀店で貰う切手
  太陽を背にして建国記念の日
  陽炎へ埋め戻される火焔土器
  こだまするコーヒー缶や柳の芽
  
辻恵美子(鷹栖町/舷燈)
  木枯や抜かり無きかと急かせをり
  不器用な生き方父似根深汁
  ぼつねんとはぐれ蛍や人の影
  蔓もどきあるじに代り護る門
  桔梗の蕾ぷつつと笑顔咲く
  
辻知子(今金町/アカシヤ)
  冬立つや日に一本の列車着く
  花筏修復の城移されて
  春昼の手術終ふを待つ真砂女の句
  熱の子の窓すれすれに初燕
  山鳩が朝告げに来る大暑かな
  
辻口秋草子(喜茂別町/アカシヤ)
  寂寂とおけさの唄や柿落葉
  冬サロンその薄き茶を飲み残す
  米寿とや海鼠になりて過ごさむか
  三昧の音もジャズバージョンや春の夢
  終活の記録ともなく日記買ふ
  
辻脇系一(札幌市)
  家々をつなぐ足跡初明り
  芽が出たと葉が出たといい年を取る
  深く挿すストロー枯野枯木山
  心胆にいつしか雪は滞る
  弔問や仰ぐ空知という夜空
  
津田とわ子(札幌市/天為・樅)
  すつぼりと父座の空さし囲炉裏かな
  なきがらに添へしめがねや冬銀河
  仮通夜の障子に猫の出入口
  田に白鳥あまたゐる日の葬りかな
  いぶりがつこ噛めば雪くる羽後の国
  
土屋陽子(札幌市/道・天為)
  母の忌やライラックの風香りたる
  窯変の壷に射す日矢寒椿
  積もるともなき静けさの名残雪
  寒明くる山並の隙夕茜
  晩夏光ポプラは風に葉裏見せ
  
角田周子(札幌市/若葉)
  神官のきざはし洗ふ雪解かな
  師の忌日芽吹きの雨のやはらかに
  ふるさとの新種てふ花見に行かむ
  産院の増築工事風光る
  心身の躓く齢春寒く