四 季 の 小 路
 
濱田恵子(美瑛町/樹氷)
  野に遊ぶ子等鳥となり毯となり
  母の日や母といた日の針仕事
  桃太郎よき名のトマト丸齧り
  手袋の穴祖母がいる母がいる
  煮凝や母に休日あったろか
 
濱田美喜子(旭川市/舷燈)
  友見舞ふ窓の隅から春がきて
  鶴嘴のこつこつ響く爺の春
  春の日の厨にははの和包丁
  桜色のリップ初めて買ふ陽春
  挨拶は二の次牡丹の匂ひくる
 
早川英夫(札幌市/澪・岳)
  花の芽の眠り纏ふは細雪
  アムームの幸と寒持て流氷来
  焼玉の音高らかに海明けし
  魁や地球の鼓動木の根明く
  甘味苦味渋味も加はへ夏手前
  
林郁子(札幌市/狩)
  鳥の影日毎濃くなる二月尽
  花の種すこし買ひすぎしかと思ふ
  水打てば夕日微塵となりにけり
  独りなら拾はぬ木の実拾ひけり
  秋の声聞き入る齢となりにけり
 
林冬美(札幌市/草樹・ロマネコンテ)
  月光の染めて分厚き屋根の雪
  白鳥の白を残して水暮るる
  厳寒の夜深々と牛の息
  母を追ふ仔馬の耳のよく動く
  海胆漁や足であやつる一人舟
 
林佑子(札幌市/河)
  流氷接岸かもめ抜刀して翔べり
  街なかに鷗が飛ぶよ春だ春だ
  そのくらゐの春泥ならば跳べるはず
  大館を割き狂ひ死にもせず
  貰い泣きして湯豆腐をくづしけり
   
葉山彰(福島町/葦牙・ろんど)
  浬奨西風絵馬の墨文字煌めけり
  風の尾を掴む天守や落椿
  啄木忌野菜を包む新聞紙
  葉月潮海峡渡る月の径
  海明けの網引く力北に生く
 
原康子(音更町/道・澪つくし)
  大夏野馬一頭を飼い暮らす
  地のほてり叩いて夕立ち去りにけり
  人間をやめても薔薇になれもせず
  どぶろくや男冥利のもてはやし
  短日の影を垂らして縄梯子
 
原田た江子(寿都町)
  香水はシャネルの五番風かおり
  祭着は母の形見や藍しぼり
  銀河濃に亡母にやさしくせず終ひ
  敬老のまんじゆう亡夫と半分つこ
  主なき旧家の庭のすすさかな
 
桧垣くみ(札幌市/未来図・樅)
  風鈴やどこにでもゐる青い鳥
  薔薇に棘自分史ときどき嘘くさき
  朝顔の蔓の行方や改憲論
  桃食べて右脳左脳を甘やかす
  芭原抜けて来し子の光りけり
 
檜垣桂子(旭川市/蒼花・舷燈)
  常滑の甕は納戸に山眠る
  吹雪来て松は漂ふ木となりぬ
  領くも看取りなりけりぼたん雪
  法名は墓誌に端座す揚げ雲雀
  赤ん坊すべてが不思議山笑ふ
 
東田ただし(棟似町/郭公・うのとり)
  霜柱山脈北に陽を浴びて
  牧の樹の風にさからふ冬構へ
  雪代の一級河川海侵す
  啓蟄の目覚めうながすけらの音
  喪にありて春の霜をく駐車場
 
疋田英子(椎内市/樺の芽)
  尾白鷺凝視の先は波高し
  初富士と仰ぐ馴染みの利尻山
  汚れ雪過去に病む日もありにけり
  延齢草長生きしたき花なりき
  鳥雲に山は腕組みはづすとき
  
久居智子(旭川市/樹氷・ロマネコンテ)
  秋日和眠りこけてる電子辞書
  ミサイルのふと過りたる浜の秋
  古書の秋文豪とても値切らるる
  あと一名祖母を呼ぶ声茸狩
  台風の弱まりて過ぐティータイム
 
久木とし子(旭川市/舷燈)
  如月や目盛を持たぬ砂時計
  開封は少し間を置きさくら餅
  風呂吹や昭和は熱くあたたかく
  推敲の果ての字あまり冬の音
  ときどきは優柔不断冬帽子