四 季 の 小 路
池原和子(上士幌町/道)
オホーツクの潮の香満ちるホタテ焼く
兄弟の不仲説なり鵜の巣
へそ踊り富良野盆地のど真ん中
背伸びする美瑛の丘や天高し
盆用意セピア色なる手書きメモ
石井こう子(小檜市/鶴)
ぼろぼろな鮭や流れの為すがまま
落葉松の金茶ひとしほ初しぐれ
札樽道吹き晴れ木花二重三重
寒紅さし時分の花とおもひけり
雨水なほダンプ列なす雪捨場
石川恵子(帯広市/道・澪つくし)
鉄線花色の薄れるトタン屋根
山彦をまつすぐもどす山桜
山笑う少女の胸に恋ひとつ
日高峰どつかり座る春の雲
夏帯をきりりと締めて予約席
石川純子(旭川市/白魚火)
自販機よりごとんとジュース草萌ゆる
ゆで玉子つるんと剥けてピクニック
峰雲やどつかり座する地神の碑
出来高はそれなりと言ふ豊の秋
人を見るゴリラの横目冬ぬくし
石川青狼(釧路市/海程)
フラメンコ阿寒颪を踏み鳴らせ
父母は力か柳か鬼やらい
妻は明日鬼になりたる豆を買う
若輩が最前列の花の宴
草原のレストランです草ロール
石川隆夫(札幌市/杜鵑花)
春暁や湖水穏やかに豊平峡
夏まつり郷土獅子舞立見して
海へだて遠望の羊蹄山雪かむる
紅葉かつ散るキャンパスやクラーク像
凛と立つ仰ぐ椴松雪に耐ふ
石川民子(岩見沢市/道)
スケーターコンマ一秒の息づかひ
氷塊は鳥の足場となりにけり
手を振ると言ふ交流帰る鳥
郭公の命に従ふ夫の鍬
リレーより雲追ふ雨の運動会
石川北辺子(東神楽町/壷)
うららかや菓子の包みに江戸の地図
島影は天売焼尻雲丹啜る
オスプレイ来るか山の端雷兆す
キクラよりホルンの余韻秋澄めり
天塩川霧茫々とビツキ亡し
石川美智子(石狩市/氷原帯)
残雪という一人子の欠伸かな
寝そべって蜆貝など見ておりぬ
たまに未来の話をしよう夏の雲
バス停の傾きもよし青十勝
さよならは先に言ってよ黄砂来る
石倉京子(札幌市/ホトトギス・夏至)
人の日のファックス人を悲します
落葉松の枝のよろこぶスキー行
甘いねと噛むクレソンのお浸しよ
一と月に一錠そしてゆるり春
日の力借り三月のふくらはぎ
石本雪鬼(札幌市/雪嶺)
春残し戦忌みつつ句座は句座
白樺の若葉一斉今朝芽吹く
七夕やメソポタミアに戦火なお
待つ蜘蛛に不安ないかと問いかける
初物のメロン皮まで夕張っ子
石山雅之(札幌市)
あらたまの松の囀り雀百
晩年の往く道問へば亀鳴けり
塵の身のいのち潤す山清水
詩の雫こぼれ来さうな星月夜
天日の見守り無量冬木の芽
和泉すみ子(北広鳥市/道))
薄ら日は彼の裸木に果てにけり
消火栓頑具の兵士めく月下
咎あるか縄日のきつき雪囲
ビー玉の寒月光に捉はるを
老残のおほかたは赤冬木の笑
磯江波響(網走市/壷)
真っ新な流氷の道母還る
流氷を土竜叩きに観光船
百年のいのち咲き経ぎ菱は実に
海霧ふかし北方墓参叶はざり
地の涯に源二の雪の今日も降る
市川翠子(函庶市/艀通信)
内側は足踏みをして福寿草
春立つや空欄にある星の列
砂山の風向き変わる猫柳
額の花朝日を浴びて始まって
一切れに大きな気泡夏の果て