四 季 の 小 路
 
中神洋子(札幌市/アカシヤ)
  白息のぶつかる訛朝の市
  人日や手持無沙汰の誕生日
  雪解風ふくらむ便り懐に
  からつぼの電話ボックス山笑ふ
  バーカーの万年筆や巴里祭
 
中川洋子(札幌市/ホトトギス)
  水音のうすく凍れる草の際
  石狩の支流源流雪解風
  六時より蕎麦屋の二階祭髪
  すすきのの夜はこれから柳架とぶ
  螺子を巻き送り出したる炎天下
 
中川原甚平(札幌市/河)
  かたつむり活断層の上に住む
  娘は母に母はお婆に花は葉に
  笑ふ孫いて贅沢な敬老日
  みどりの日昭和がうろうろ迷ってる
  天高く大谷くんになりきる児
  
中齊郁子(登別市/若葉・青女わかくさ)
  雪中にうごめくものや春近し
  紅筆とパフを洗ひて女正月
  牧の原月僅々と年歩む
  蟻の列ふと一匹が列はなれ
  石剥ぐと右往左往に蟻騒ぐ
 
中嶋強(札幌市/氷原帯)
  ししりむかりょつこうy f(x)さるさるへ
  おおのeπi i2いちろうおおきみきみのし
  まさ22 7かなきみひょうげんしのきみ
  かがろうそくそうけん112 21そのにじょ
  げんさんににに26(?)きつつさぞうしの
 
中島東彦(札幌市/道)
  東京の不精の息子初電話
  産土の蛽もてなす湖の宿
  時の日や今もネジ巻く大時計
  日輪を海に入れたき辱暑かな
  廃線は枕木のみに虫すだく
   
中島土方(新得町/樺の芽・氷原帯)
  フロイドもユングも知らず陽炎ぬ
  アドレナリン溢れる五月万歩計
  トリツキーな老いの言動孟蘭盆会
  黙想にあらず愚考の去来の忌
  翼持つやんちや老人初スキー
 
中田秀平(石狩市/天為)
  表札は父の手作り賀状来る
  ファシストもナルシストも来鬼やらひ
  支笏湖の瑠璃のとうすみ蜻蛉かな
  雁の列一番星を子と追うて
  裸木の片身そがれし一樹かな
 
中田琢志(札幌市/雪嶺)
  子ら巣立ちサンタのゐない聖夜かな
  少しずつ老いゆく街に初明り
  満天の星座探して湯冷めをり
  三世代思ひ思ひの芝桜
  読初や古き異国に遊びをり
 
中野淑子(札幌市/道)
  掃き初めや家族四人の挨追ひ
  ふるさとの地景をなして残る雪
  啓蟄の風に聡き身鉋屑
  園丁の目覚めは早し露しとど
  稲雀家代々の子沢山
 
中場源二(浜頓別町)
  古稀すぎてマスク美人となりにけり
  二日酔ひゴクリと流し蜆汁
  蒲公英は本音を云はず咲きにけり
  場所取りは六時からです運動会
  一滴が大河へつづく岩清水
 
中村英史(札幌市/方円)
  行きずりの漁港に春の波がしら
  和の態なさぬ村とや蛇いちご
  鉄臭のなき「鐡の街」月天心
  棺を持つ掛声微か冬の葬
  貫婦人の月下失踪きたきつね
 
中村公春(鷹栖町/白魚火)
  月影や大雪原の村の道
  格調の高き嘘なり四月馬鹿
  社あり池あり枝垂柳かな
  うなぎ屋の親父は寡黙長のれん
  酌女鎖骨うきでる残暑かな
  
中村ひろむ(札幌市/壷)
  天や地や凍てて幼の靴片方
  ホワイトアウト道の裏にも道続く
  朧夜のあの子死ぬまで舞ふつもり
  悪縁もひとつのえにし遅桜
  湖底まで続く道あり鰯雲
 
中森千尋(札幌市/道)
  寒月の蒼さ目に沁む歩道橋
  我が歩幅もて馬鈴薯を植うるかな
  革を刈り師の碑へ通す風の道
  秋暑し吐息を洩らす仁王像
  散りしだく漆紅葉や穴居跡