四 季 の 小 路
 
河原小寒(札幌市/壷)
  推敲に妻の知恵借る毛糸玉
  窓ごとに馬の顔出づ春の山
  歳時記に席守をさせ夏の航
  新盆の兄まだおはす青畳
  分校の跡にコンビニ鰯雲
 
川端朋子(利尻町/道)
  島の子の小さき円陣運動会
  夫の悔ひ吾に悔ひなき春ショール
  硝子戸に潮のざらりと五月来ぬ
  煩悩のひとつを零し曼珠沙華
  虫喰ひ葉真如の月の透かしをり
 
川人久美子(札幌市/雪嶺)
  嬰児抱く娘のまなざしや花菜風
  ものの芽やほぐれゆく朝孫生れし
  遠雷や灰暗き朝めざめゆく
  おでん鍋湯気のむかうに安堵あり
  柿届く米寿の伯母の愛のせて
 
河村まさあき(札幌市/ロマネコンティ)
  朧夜や犬に引かれてよもつくに
  つくしんぼ禅問答に飽いている
  晩年はうすむらささに蝉しぐれ
  しがらみの先に先へと藪枯らし
  膝をおる寝癖がいまだ雪しじま
 
川村暮秋(旭川市/雪華)
  若沖や春の声する百犬図
  聖五月初心を秘めし夫婦かな
  炎帝や龍飛海底駅画廊
  自死多き病める平成桜桃忌
  俳諧の八十路の書展風薫る
 
川村良子(札幌市/若葉・青女わかくさ)
  月皓とマリモの湖の厚氷
  あたたかや小箱のやうに母座り
  新しきタオルの匂ひ五月来る
  父の日の父となりたる子の電話
  ポリバケツ一つさらつて野分過ぐ
 
川元玲子(札幌市/玉藻・はるにれ)
  春コート新人といふ歩巾あり
  置薬子等には愛想紙風船
  朝靄の支第湖に舟姫縛釣り
  赤のまま夕日そびらにわらべ歌
  月かかげ能面の翁うおんうおんと
 
川守田正康(札幌市/杉)
  書を臥せて闇やはらかに春の雪
  雪しずり雪の節々ほぐれゆき
  野に摘みて瓶に眠れり苔桃酒
  頁繰る雪の探さに身をゆだね
  消燈の闇に漂ふ去年今年

 
菊田琴秋(札幌市/すみれ草・蒼花)
  遠足の子らを遊ばすねこじやらし
  ビール園レンガの色も秋となり
  敬老日街を彩るナナカマド
  秋雨や曇るガラスに好きと書き
  一列のとんぼ連れ来し朝の道
 
菊池瞳乃(札幌市/道)
  フルートの少女の素足渚来る
  トロ箱に茄子を咲かせて漁師妻
  どかと置く鰭かたき魚祭来る
  片減りとなりて放免祭下駄
  榾の宿物みな神となす民と
 
菊地穂草(函館市/道)
  女手の菖蒲に紅き根の力
  片恋の閨の畳に海の冷え
  精勤の窓にみなぎる万年青の実
  すぐ消ゆる音色生みつつ毛糸編む
  膝抱けど寒し気圧の谷の閨
 
北川保雄(北広島市/河)
  ふるさとの嫁さんヤーイ村しぐれ
  この国のかたち分らぬ懐手
  シロツメ草咲けばふんわり雲に乗る
  再建の心を一つにメロン祭
  秋の夜の二胡の音色や千の耳
 
北川義明(札幌市)
  アフリカを夢見るキリン霏霏と雪
  みぞるるや窪む石段集治監
  秋思不意にモーツァルトのト短調
  河骨の咲くや星屑こぼれ来て
  金魚玉吊るや銀河の星となる
 
北島晶子(札幌市)
  氷像の鳥羽搏くや夜もすがら
  八方に陽を散らしては雪割れり
  一杓の光となれり甘茶佛
  筆先に春の光そふ写経かな
  吾子を攝る父のまなざし祭髪
 
北野克誠(留萌市/道)
  朝寒の妻よ頬紅うすくさし
  蹲ひの苔に沌み入る寒の水
  剪定の青空切つてをるごとし
  陽炎を積んでダンプは天北へ
  咲く匂朽ちゆく匂木下闇