四 季 の 小 路
 
相羽よしゆき(湧別町/葦牙・草の王)
  反芻の牛のよだれや草青む
  はからずも余花にまみえし一日旅
  水鉄砲声かけしばかりに狙われる
  顔馴染減りしふる里かたつむり
  酷暑来る犬一匹に影もなく
   
青木まゆ美(札幌市/ミモザ)
  立春の風のあと追ふ日差しかな
  夏めくや水面をゆらす魚の群れ
  天窓の古き蜘蛛の巣牧舎跡
  茫茫と花野となりし無人駅
  雪しまさ子の声響く通学路
 
青山酔鳴(恵庭市/雪華・itak)
  刺青の喉唄深し鳥帰る
  金魚玉自伝最後の恋人欄
  蚕蛾の恋を主食として果てぬ
  偽果として乳房偽薬として六花
  青年団員みな孫ありて出初式
 
赤江橋明子(北見市/葦牙)
  工大の塀に絡まる蔦紅葉
  金賞の菊にもつかれ見えてきし
  木漏れ日に甘味増したる葡萄取る
  盆の家小さな靴も並びをり
  牧閉す噺き返す能取岬
 
赤木しづ乃(札幌市/葦牙)
  音立てて初夏のサツポロ動き出す
  ポケットにぬくし龍太の文庫本
  送り出す声なきことば大試験
  冬霞今サツポロを故郷とし
  巣立終へ柱の傷の深みゆく
 
赤部あき子(札幌市)
  風鈴や卓に夫の座私の座
  レース着て二の腕に風新しき
  理髪店新樹並木に窓開き
  「修身の鐘」校庭にみどりさす
  教本を抱く女子像みどりさす
 
赤山典子(札幌市)
  八十路なる孫子と集い壽祝う
  誰かれの幸せいのる福壽草
  みまかりし百才姉の言の葉若し
  米寿なりあるきソロソロころばぬよう
  花畠の草のびきて若きらに
 
秋葉礼子(粗川市/樹氷・葦牙)
  白酒の吹けば笑窪の生れたる
  「ばらが咲いた」普通の曲の薔薇が咲き
  雪だるま肥満をゆるす喇叭吹き
  草の実や縋り付かれて体操着
  どんぐりの帽子を脱げば子規の顔
 
浅井通江(札幌市/艀通信)
  歯刷子は固め裏山から初日
  立春は縦横高さ欠けてくる
  啓蟄や白衣の糊の良くきいて
  陽炎や釦の一つ取れかかり
  引出しがつっかえている霾ぐもり
 
浅野数万(苫小牧市/白魚火)
  支笏湖の雨に透きたる蝸牛
  水無月の湖底の石のみな佛
  夏の日の笑ひに明日ありにけり
  白日傘薄日得し湖の透きとほる
  支笏湖の空を余さず夏の星
 
浅野富士子(旭川市/道)
  百千鳥ロザリオの珠繰りをれば
  木の芽風ひかり纏へる聖母像
  薔薇が咲きはるかな夫の誕生日
  雲を突くバベルの塔や朱夏の天
  小鳥来るアダムとイブの彫像に
 
浅野美代子(上士幌町/道)
  踏切のランプ点滅夜焚火
  紅梅の七分咲なり大坂城
  不登校蒲公英の笛ちと苦し
  雨後の空ふと振り返る夏落葉
  竜胆や限界集落ひとりごと
 
浅水みつ(清水町)
  着ぶくれて心のあやをとりのがす
  着ぶくれて生きる力をいただきし
  この家守る心静かにおだいもく
  着ぶくれて静かに守る命なが
  着ぶくれて静かに祈るここちかな
 
蘆立角翠(札幌市/澤)
  日脚伸ぶ体内時計狂はせて
  道を問ふ異国の人の手に団扇
  トンネルの狭間の村に稲架の見ゆ
  万物が背伸びしてをり雪の朝
  新手帳開く頁に淑気立ち
 
阿部志津子(石狩市/道)
  静けさが形となりて牡丹雪
  手渡しで受ける新聞春寒し
  子鵜の親に似てくる今朝の声
  丸餅の祝の大文字敬老日
  水澄みてダム湖の底の欠け茶碗