四 季 の 小 路
 
岩本京子(札幌市/ホトトギス)
 漁船の沈まんばかり秋刀魚積み
 臨月のごとき鮞鮭売られ
 秋灯に加はりゆきし漁の灯
 花野行く歩く詩人になりきって
 銀漢の中母のほし父の星
 
上杉敏子(札幌市)
 寒戻る上着のボタンひとつ掛け
 春寒しブックカフェの好きな席
 春ショール少し派手日かとも思ふ
 大空に雲一つなし啄木忌
 雛仕舞ふ日よ開き慣れし鳥の声
 
上田敦子(函館市/艀)
 巻尺の雪解山へと伸び出して
 熟成を取り出す桜冷えの指
 後向きに降ろす手の数カーネーション
 肉厚の鰻と古き仏たち
 海底にテープ膨らむ冬隣
 
上田すみ子(札幌市/雪嶺)
 縫初はアイヌ模様の小座布団
 ムックリの調べで別れ春の葬
 語り部を継ぐ若者や原爆忌
 花芒波響の絵画色褪せず
 黄落の中ヘランナー消えてゆく

 
植西喜雄(名寄市)
 雪深々遺影と語る日もありぬ
 秋深し息子の遠忌修しけり
 妻の亡き身の秘むくらし雷うつろ
 仏飯を供え春だよ妻に告ぐ
 文の友春風添えて文届く
 
上野羽吹(札幌市/道)
 初電話関西弁は変声期
 入学の子のゆたかなるお下け髪
 主亡き更地にあやめ整然と
 新き縄の香結ぷ冬囲
 癌告知受けたと友が雪の朝
 
臼井千百(札幌市/氷原帯)
 根雪野の源二一郎アンピシャス
 癌の字のならず者面冴返る
 花疲れエスカレーターエレベーター
 たまたまの生まれ合せのつくしんぼ
 母の日のナチンプイプメンターム
 
臼渕啓子(札幌市)
 窓際の日差しに託す鉢椿
 園児らを追ひかけてゐる花吹雪
 星空に花火の音が風に散る
 天高し産声高く三男坊
 北風の帽子までをもさらひゆく
 
内野弓子(札幌市/蒼花)
 力みなき糸めぐらして秋の蜘蛛
 息を吐く夷酋列像紅葉晴
 トランプの兵なら通す春の闇
 過去帳に一人静が群れてゐる
 イタリアンサラダの横の冷奴
 
内山実知世(函館市/白魚火)
 幾度も遠くへ突いて雛流す
 桜の芽園外保育は句碑の辺
 良く動き良く泣く児なり初節句
 草茂る畑置きざりの配車かな
 京友禅始祖像据うる紅葉寺
 
梅川宏子(札幌市/晏)
 人影のまばらなダム湖虹かかる
 七夕や手紙待つ亡母そこにいる
 二人分ご飯炊く間の夕涼み
 スマホに遊ぷ子等に鐘原爆忌
 長椅子を我が席とする鰯雲
 
梅津早苗(苫小牧市/河)
 草笛や牧羊神の昼下がり
 朧夜の路地に灯ともすトリスバー
 花満ちて吉野絵巻の水のこゑ
 黄落やセーヌのほとりの切手市
 寒灯やかぎすフィルムは死者ばかり
 
漆崎とし子(札幌市)
 しっかりと踏みこむ八十路雪解急
 三月を急いで流す十勝川
 野を焼いて今日の疲れを風呂に捨て
 饗饌の話し上手や心太
 大空へこゑ軋ませて鳥渡る
 
江草一美(札幌市/艀)
 大空が体育帽と揺れる春
 囀や田の神様が坐ってる
 D51の汽笛憲法記念の日
 数珠輪袈裟搭乗口の晩秋
 そろそろ沸点風邪気味の二人
 
越前唯人(苫小牧市/道)
 或の夜の君かも知れぬ雪女
 父の背を摺るごとくに墓洗う
 吾れ産みし陰に襁褓を十三夜
 蛍にもなれない人の三回忌
 今日からは切り株として秋日和