四 季 の 小 路
   
米澤洋子(札幌市)
  北岬忘れ昆布に鴎来る
  君を見し赤富士染まりくるまでを
  成長を浴衣の丈が見せてをり
  一列に夏風まわす大風車
  乙女らがころころ笑ふ夏木立
 
四方万里子(札幌市/WA)
  氷像に罅如月の血がかすか
  おはようの及ぶ限りの桃の花
  北海道大学しろすぎるさくら
  戸いちまい隔てて夜の巨桜
  時計草自由にヨット遊ばせて
   
渡邊喜久江(旭川市/道)
  折り上げて影の生れし紙雛
  青空に笑顔のやうな春の雲
  菊剪りし香りの残る花鋏
  黒猫の金の目光る十三夜
  胸あづけしばし雪虫遊ばする
   
渡部彩風(北見市/道)
  クリオネの億のはばたき流氷来
  てふてふの一直線に飛べぬ性
  寒禽の声の交叉や雑木山
  枯木立浮く満天の星の中
  風除に波吠えかかるオホーツク
   
渡辺孝子(登別市/夏至)
  五七五地球も回る一日や
  犬橇やユーコン川を行きし人
  雪まつりオスロワルシヤワ追憶す
  角巻の遠くの一人吾ならん
  父さんは三つの家を建て春眠
 
渡辺のり子(札幌市/水原帯・ロマネコンティ)
  わたしにも導火線あり使珠沙華
  心って毬栗みたい君みたい
  渋柿に生まれ責任とれなんて
  革手袋わたしけものでありました
  やわらかいけど傷だらけ春の泥
   
渡辺博生(岩内町/ホトトギス・青葦)
  落第のレポート眺めゐるばかり
  港出る波にヨットの正念場
  鰯雲影置く穂先槍ヶ岳
  山映す大正池の水澄めり
  竹馬に乗り大人びてゐる目線
   
渡部まりん(札幌市/鷹)
  ユトリロは十一月の色なりき
  積雪の一気に愛は不透明
  溶けてまた凍る男と女かな
  出席と決めて投函春の月
  帰り道ずつと水母がついてくる
 
渡辺嘉之(占平町/悠)
  元朝の港を揺らす大漁旗
  早春の風は伸ぴたり縮んだり
  卯浪立つ浜に遣りし捨て番屋
  本陣も群来もある町いわし雲
  孤独ならみんな冬野へ集ひけり
   
渡辺理沙(岩内町/ホトトギス・青葦)
  春眠や夢の世界の入り囗
  春の雪ユーモレスクの軽やかに
  神輿来る前は静かな町でした
  水澄みて空を見上げる魚かな
  払ひでも大綿服にしがみつく
   
和田伯遊(札幌市)
  玻璃ごしに光る硯海冬の月
  父の日に大事にされて疲れけり
  夏海の沖を坩堝に夕落暉
  木道の別るる径や水芭蕉
  軍神の童顔見せて終戦忌