四 季 の 小 路
   
広瀬むつき(函館市/自魚火)
  図書館に盲導犬のいる小春
  春の風邪新幹線にて見舞はるる
  わが書架の詩集も古りて春愁
  雨の日は雨の花とし鉄線花
  桐の花香りもろとも吹かれをり
 
深澤雅子(札幌市)
  初鏡年月きざむ笑ひ皺
  受験子に結果は問はずレモンテイ
  若人の大志を今も楡大樹
  苗売の栃木なまりに足を止め
  不揃ひの朝もぎ苺昧は良し
   
深畑千恵子(札幌市/ホトトギス)
  盲導犬伏して親しき初電車
  遠き日の浜の匂ひや鰊群來
  ふるさとは代替りして盆の月
  二の蔵はもろみの匂ひ新走
  老松にあまたの添へ木冬構
   
福井展香(札幌市/石狩文芸・いしかり川)
  ゆっくりと老いて行きたしかき氷
  ハナマルを貰いてやる氣出す四月
  星空を更に彩る揚花火
  春雨や眠氣もよおすバスワイパー
  タ闇やうなるサイレン冬の道
   
福士顕子(旭川市/ゆく春)
  をちこちの水動き出す若草野
  月朧明日考へることにする
  命名の金文字笑まふ新茶かな
  紅葉の色尽くさねば落ちゆかず
  時雨るるやガラスエ房火の雫
 
福田香名子(積丹町/さるるん)
  風呂上がりアイスクリーム弾む足
  蜘蛛の巣にしずくきらめく朝の庭
  乳母車視線の先の狗尾草
  遠き地の八目鰻の便り聞く
  梅告げし季節の便り手に軽し
   
福田元子(札幌市/蒼花)
  雪解けて川は地球の毛細管
  百歳は人ごととして亀鳴けり
  右脳は緑あふるる山の中
  草刈の極細歯間ブラシかな
  鈴虫や野辺の地蔵の顎見えず
   
藤井静子(札幌市/雪解)
  まんさくや風に呟くやうに咲き
  啓蟄や未だに雪の羽交ひじめ
  種袋振ってたしかむ軽さがな
  蝦夷富士の影負ぶ裾野耕せり
  かたつむり角が逡巡してをりぬ
 
藤井美智子(岩見沢市)
  目で数をかぞえて嬉しさくらんぼ
  さて今日は何をしようか夏至なれば
  虹立ちて東の空に幕が開き
  白さうび咲いて明るい小さき庭
  黄金色の月が登りし夏至の夜
   
藤嶋正(札幌市/雪嶺)
  冬めくや口ー文字の人ばかり
  語部の残るコタンに虎落笛
  年酒して嘘八百の夢語る
  悪口をたつぷりと入れおでん酒
  淡き夢語り明かして古暦
   
藤瀬正美(北見市/ホトトギス・玉藻)
  台風の一過又すぐ来る予報
  草足りて眼涼しき放馬かな
  山に雪狐の毛並美しく
  秋冷の籠もる竪穴住居かな
  茸生ふ竪穴住居跡並ぶ
    
藤田健(知内町/葦牙・道)
  ひと啼きに応へふた啼き寒鴉
  菜を刻む音のかすかに朝寝かな
  妻呼べばはや失せさうに秋の虹
  いわし雲昭和一桁長老に
  かき氷頭の芯を貫ぬけり
   
藤田豊子(札幌市)
  身の何処か軋む音して流氷来
  告げざるは告ぐに勝れり懐手
  夜桜の根の掴みたる大地かな
  目薬に溺るる景や風光る
  落葉踏む余生の歩市大切に
   
藤田美和子(札幌市/河)
  凍裂の幹より桜あふれたり
  墨彩の海鳴りやまず新樹光
  不知火や引揚船のあのあたり
  かりがねや北斗へ還る魂のあり
  いくさあるか天道虫の充電中
   
藤田保子(札幌市/雪嶺)
  雲一朶去りて月光湖美しく
  一村を暮れつつ濡らす時雨かな
  遠き日を繋ぐ旧友あり天の川
  吹雪止み鳶の舞ひ立つ石狩野
  降り頻る雪に埋もる牛舎の灯