四 季 の 小 路
   
菊地穂草(函館市/道)
 薔薇胸へ詩の紅血を授けしや
 カメラ目線去りて桜に奢りなし
 耕すや大地踏ん張る人の文字
 大容れてたちまち浮力大花野
 掌のなかの子猫の鼓動安息日
 
北川保雄(北広島市/河)
 アスパラの句の音色を懐に
 攻瑰や帰らぬ島の七十年
 満月の光しぐれとなりにけり
 有終の母校百年名残雪
 冬耕の一点父の動かざる
   
北川義明(札幌市/ひめりんご・踏青)
 一心に点字読む指風光る
 延齢草倒木埋めて咲きにけり
 矢母衣にも潮風礼文敦盛草
 冬ざれや北ヘー途に天塩川
 握る手の語る艱難細雪
   
北島晶子(札幌市/澪)
 一大事あるやも蟻の急ぎけり
 たまゆらの試歩とふ日々や土恋し
 だんまりの鴉のとりで大夏木
 腕臼の轍たのしや雪解道
 奔放に雑木林の芽吹きかな
   
北野克誠(留萌市/道)
 剪りすぎしまばらの梅の面構へ
 人の死や琥珀色なる春灯し
 菖蒲湯や七十過ぎの膝小僧
 リラ冷えをいたはり合ひで通夜の席
 春愁やピエロの泪大袈裟に
 
北見静香(比布町/樹氷)
 てらてらと外灯遊ぶ薄氷
 春コート着たり脱いだりエルニーニョ
 どくだみ茶その可憐なる花も活け
 大の世を焚きつけている大花火
 ラフランス愛の形をそのままに
   
北見弟花(比布町/樹氷・あざみ)
 旭川の八方信じ白鳥来
 七月や天真爛漫海に容れ
 祖は福島白桃をむきに長寿です
 爆発した君らいま一本ずつの枯木
 石狩川の息を尽くせる霧氷林
 
氣田和子(札幌市/はるにれ)
 金ボタン永久にさくらの輝けり
 海光の色の時間差夏きざす
 失効の旅券の栞花むくげ
 菊花展襲の色目誇りけり
 コンパクトディスク遠目に稲雀
   
木藤やゑ(小樽市/鶴)
 やう生きて八十六や小豆粥
 夫恋の一句未完や冬満月
 寒長し独り暮しになほ長し
 義姉逝きて早や一年の卯月かな
 かくしやくと卒寿の姉や山笑ふ
   
木村紫峰(栗山町/畦道)
 春立や日増しに広がる道路幅
 彼岸会や今生かされて弥陀の手に
 廃校舎さえずりだけが木魂して
 遠霞夕張岳や煙立つ
 黒揚げ羽君が影かな墓洗う
   
木村悛香(札幌市/雲の木)
 遠野火の舌先暮るる山の影
 廃線と決りし土手の黄たんぽぽ
 直立のビルは光体夕立来る
 仰ぎ見る雲は汀に似て晩夏
 落葉より影立ち上る文学館
   
木村照子(旭川市)
 らわん蕗命の水を滴らす
 みつ葉播く屯田の土貰ひ来て
 烏の子地へ落ち生くる術もたず
 夏寒し竿竹売りの江戸調ベ
 コスモスの洪水へ入り溺れもせず
   
木谷洋子(天塩町/若葉・青女わかくさ)
 花は葉に身過ぎの書道塾を守り
 野仏の賽銭たまり木の芽吹く
 退院のわれに囀りひとしきり
 漁るものなかりし漁港寒鴉
 攩網の潮したたる鮭荷揚げ
   
工藤彰子(札幌市/蒼花)
 朝顔や波郷の一句ありありと
 黙祷にはじまる句会春の雪
 桔梗の白を加へて共花とす
 新涼の鞄に古き時刻表
 句碑の背に白玉の露結びけり
   
工藤国子(音更町/柏林・花鳥)
 俳誌ありコーヒーがあり春炬燵
 夫出掛け雛にもらす一人言
 喧嘩する元気のありし一年生
 ぴかぴかの風駈けてくる一年生
 囀りに狛犬の耳動きそう