四 季 の 小 路
 
川内谷弘美(松前町/葦牙・道)
 救急の担架に縛られ雪仰ぐ
 山彦を鍬に打ち込み耕せる
 孫に習う携帯電話花は葉に
 熊除けのスプレー腰に蕨折る
 遠足の声より先に動き出寸
   
河岸悟郎(積丹町/さるるん)
 ツッパリも涙浮かべて卒業す
 春の海釣人ひとり引きを待つ
 炎天下人の花咲く甲子園
 風鈴の舌となりたり五円玉
 赤錆の画鋲そのまま冬に入る
   
川囗ひろ志(登別市/青女わかくさ・若葉)
 千切れ藻を浜辺に上げて春の潮
 廃鉱の碑さびれ木の芽吹く
 草若葉稚児の爪のやはらかし
 花日和観光馬車の鈴の音
 目刺買ふ包みてあまる古新聞
   
河崎秋男(札幌市/ミモザ)
 春雪や見え隠れする煉瓦道
 慰霊碑の叔父の名なぞる終戦日
 けん玉とひとり遊ぶや秋の暮
 日記買ふあれこれ迷ひ五年とす
 着ぶくれて駅への歩みのろくなり
 
河原小寒(札幌市/壺)
 腰骨で鮭の迂闊を曵いてをり
 銀杏の踏みしだかれて永田町
 玄の句の筆の勢ひ寒すばる
 南無薬師瑠璃光如来春の雲
 菜の花の雄蘂功名とは無縁
   
川端朋子(利尻町/道)
 島出でて車窓におらが山笑ふ
 出航の余韻のいまだ夏の霧
 露天湯に菅笠ふたつ秋時雨
 喪に向かふ雲上もまた御講凪
 俊吉を訪ふ島訛り冬暖簾
   
川人久美子(札幌市/雪嶺)
 桃の花袴さばいて弓放つ
 草萌ゆる姉追い弾むランドセル
 思い出を風船にのせ離校式
 遠雷や仄暗き朝めざめゆく
 土塊に挑む工房水温む
 
河村まさあき(札幌市/ロマネコンティ)
 転生はいまだかなわず葱ぼうず
 すきとおるおみなの性や蛇の衣
 耳しいの耳のゆくえや蔦もみじ
 つくつくし完璧すぎるこの時空
 尼寺をことなくすぎて雪あかり
   
川村暮秋(旭川市/雪華)
 日の影に愁ひ黄梅人の世も
 鳥雲に翼のあれば風となる
 旅にゐて隠る心音万愚節
 妖光や脱ぎすてられし蛇の衣
 虹立つや献血できぬ齢なる
   
川村良子(札幌市/若葉・青女わかくさ)
 母の手の綿子半纏身に軽ろし
 ラクロスの女子大股や風光る
 子のやうに母のはしがる氷水
 高架ゆく電車も秋の燈となりぬ
 寝食に尽くる一日冬籠
   
川元玲子(札幌市/玉藻・はるにれ)
 さりさりと風が触れゆく雪の嵩
 海洽ひを間垣高々能登の春
 奥能登に父の影追ふ雪の果て
 ザリガニの川がその奥ちちろ鳴く
 岩清水山の吐息を葉に満たし
   
川守田正康(札幌市/杉)
 匂ふやうに睫毛の雪の消えてゆく
 一つ輪にひとつ命やあめんぼう
 朝よりの二言三言春の雪
 サハリンの山河声挙ぐ雪解光
 誰が聞かむサハリン島の春潮を
   
菊田琴秋(札幌市/すみれ草・蒼花)
 風光りかんざし揺れて祇圉ゆく
 舞妓にも会えそう春の宵の路地
 物足りて何か足りずの文化の日
 えぞ鹿の『飛び出し注意』秋深し
 新緑や湖面に映る山の影
   
菊池瞳乃(札幌市/道)
 若楓明日への切符握りしむ
 納骨をすませぽくぽく花の道
 花の名の魚や貝や西行忌
 パリー祭パリに勤務の子を思ふ
 生きたしと歩くひたすら日の盛り
   
菊地弘子(旭川市/ホトトギス・花鳥)
 宮島の鳥居に卯浪満ちてくる
 見送りの駅まで歩く朧の夜
 花の下神住む池に白き鯉
 東風の海うさぎ千匹波の立つ
 鎮魂のきらきら降りし春の雪