四 季 の 小 路
 
金森鯉童(札幌市/行く春)
 香り嗅ぐ猫の細目やシクラメン
 若草に目尻下げをり暴れ馬
 亀鳴くや靜かな夜の屋形船
 鮭鍋を囲む仲間や髭親父
 茶房からジングルペルや夜の街
   
金山敏昭(札幌市/澪)
 新雪や楔のごとく第一歩
 峰雲の内に秘めたる土性骨
 炙られし朝餉の鰺に年忌あく
 赤のままめざすは芭蕉記念館
 結界はここぞと畦の曼珠沙華
   
金子たか子(札幌市/花桐・ミモザ)
 春雪や惜別の駅一両車
 万緑や古き酒蔵匂ひける
 熱戦の果ての整列雲の峰
 客帰り静けさ盆の星殖ゆる
 空蝉の一個見つける挾庭かな
   
金子真理子(札幌市/蒼花)
 鞦韆を漕ぎて億年先の空
 繰り言を躱し海月となりてゆく
 へその緒の切れてそら豆甘くなり
 七月の空の青さや河馬の口
 全山の鼓となりし蝉時雨
 
金子美恵子(札幌市)
 背伸びして子の仮縫や涼あらた
 天高し鬨の雄叫びラガーマン
 増築の介護ホーム今秋深し
 青空も吹き入れ梨の袋掛け
 幼虫に畑の茱残し秋うらら
   
金田野歩女(北見市/白魚火)
 吊橋へ一朶迫り出す猫柳
 クルーズの大揺れ小揺れ夏至の波
 湿原と遊ぶ色鳥弾みをり
 庖丁の切れ味嬉し菊花蕪
 年賀状平仮名文字の表裏
   
金田一波(利尻町/道)
 雪虫も季節の仲間湧いて来い
 啓蟄や藻屑の中に動くもの
 雪形は息づく山の笑い皺
 俎板の音に暮れゆく晩夏かな
 機嫌よき風にじゃれ合う猫じゃらし
   
かまた純子(札幌市/秋・加里場)
 読み聞かす絵本の増ゆる去年今年
 五カラット程のゼリーに銀の匙
 門限の延長線に夜店の灯
 赤蜻蛉しつかり繋ぎ止めて行け
 納豆のそこそこねばり年の暮
   
上家弘子(札幌市/葦牙・ろんど)
 つまづきて捕へし虫を逃しけり
 夏痩せにあらず病歴纏ひつき
 秋彼岸斎場からの招待状
 ななかまど日向け朱き実鈴生りに
 エレベーター今宵の月を一人占め
   
亀松澄江(札幌市/草木舎)
 ゆるやかに恋猫抱え転職す
 たましいも帽子も新調青き踏む
 一枚の空で繋がり終戦日
 背にいっぱい新涼の風海の風
 みみず鳴く浮きっぱなしの地球かな
   
加門サダ子(旭川市/舷燈)
 炎昼の陰影深き千羽鶴
 老いてなほ感電しさうカンナの朱
 鬼灯を鳴らせば昭和あふれ出る
 末枯の野に佇ち己が行方問ふ
 裸木に耳当て気力もらひをり
   
加門勝(八雲町/壺・八雲)
 ポケットを出たがる拳雲の峰
 湯ざめして戦の前に在るごとし
 初凪や湾を縁取るさざれ波
 とびとびの棒の標や雪の村
 えぞにうや山の子傘を持たざりき
   
粥川青猿(音更町/樺の芽・俳句人)
 指切りに慣れて指切る赤のまま
 行く秋のいざとなったら万華鏡
 干大根ぶっきらぼうに留守の家
 念のため叩かれている冬の釘
 雪しんしんどこを見ている紙の鶴
   
狩野和子(札幌市/郭公・雲の木)
 花八手漢方薬の皿秤
 散紅葉浮き沈みては堰を出づ
 屹立の冬木城址の空広し
 野辺送り枯れし並木の空明り
 初春や墨浮かみたつ仮名料紙
   
川合眞知子(札幌市)
 めでたさや秀衡塗の雑煮椀
 目覚しに頼らぬ暮し夏の朝
 病床の夫に送りし団扇風
 取り込みし洗濯物に熱寵る
 悠々と蜻蛉の空となりにけり